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OECD邦人職員インタビュー:大場一雅 OECDグローバル関係局東南アジア地域プログラム ジュニア政策分析官(JPO派遣)

2015年9月

Mr.Oba

質問1. OECDで勤務することになったきっかけを教えてください。

  私は、国際社会に貢献できる人材を養成し、日本の大学の国際競争力を強化させることを目的とした文部科学省長期海外留学支援を受けて、パリ第1大学、高等師範学校(École normale supérieure)とパリ第7大学の共同研究機関で修士課程を履修しました。修士号を取った後、投資銀行で働いていたのですが、2008年頃アメリカに端を発する世界金融危機が発生して、これがさまざまな経路を通じて世界の成長や貧困削減に悪影響をもたらすのを目の当たりにしました。この金融危機をきっかけに、持続可能な経済成長と金融の安定化を実現することを通して、貧困などの国際問題を解決するために働きたいと考えるようになりました。


  2011年には東日本大震災もあり、そのような思いが強くなっていた最中、国際労働機関(ILO)駐日事務所の方からバンコクのILOアジア太平洋地域総局で求人があることを聞き、ILOで経済分析コンサルタントとして働くことにしました。その後、地域経済統合にも重要な役割を果たす通商交渉に関わる仕事ができるということで、ワシントンDCの在米国日本大使館に勤務しました。在米国日本大使館では、歴史的な通商協定になりうるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)やTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)などの多国間通商協定に関する分析を行いました。そしてその後、JPOとしてOECDにおける東南アジア(ASEAN)の地域経済統合に関する仕事に携わることになりました。

質問2. ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)とはどういう制度ですか。どのように選考されるのですか。希望するポストに就けましたか。

 JPOは、国際機関で勤務することを希望する若手日本人を対象に、日本政府が国際機関への派遣経費を負担して、2年間程度世界各地の国際機関で職員として勤務させる派遣の仕組みです(http://www.mofa-irc.go.jp/jpo/seido.html)。国際機関の正規職員となるために必要な知識・経験を積む機会を提供しつつ、同時に、派遣期間終了後に正規職員として派遣先機関や他の国際機関に採用されることが期待されています。


 JPOとして派遣されるには、日本政府による選考と国際機関による選考の、二段階のステップがあります。日本政府の第一次審査は書類選考で、それに合格すると、第二次審査として英語筆記試験と日本語及び英語での面接試験があります。第二次審査に合格すると、JPOの候補者となり、次に国際機関による選考があります。国際機関による選考では、私の場合、OECDとの間で、更に筆記試験と面接試験が行われました。自分の希望ポスト、私の場合は「グローバル関係局東南アジア課ジュニア政策分析官」だったのですが、その専門分野について電子メールで試験が行われ、同じ日に、テレビ電話で現在の上司を含む数名との面接試験がありました。無事にすべての試験に合格することができ、当初から希望していたポストに就くことができました。

質問3. 現在の任務を教えてください。

 現在私は、東南アジアの地域経済統合に関する仕事をしています。具体的には、「OECD東南アジア地域プログラム」というプロジェクトを通じて、ASEAN経済共同体の立ち上げのサポートを行っています。OECD東南アジア地域プログラムでは、本2015年に予定しているASEAN経済統合と東南アジア各国の国内制度改革の支援を通じて、同地域の域内格差や、「中所得国の罠」の克服、安定的で開かれた経済成長の実現を目指しています。OECDは2007年の閣僚理事会において、東南アジアを世界の成長エンジンであるとして関係強化の戦略的優先地域に指定しており、日本は、議長国を務めた2014年の閣僚理事会において、安倍総理の参加のもと東南アジア各国の閣僚とともに公式にOECD東南アジア地域プログラムの立上げを宣言しました。


 この東南アジア地域プログラムに関係して、私は主に3つの種類の仕事を担当しています。一つ目は、全体的なプログラムのサポートで、プロジェクト開発、国際会議等の企画・運営、事務総長や局長に対するブリーフィング・ノートや発言要領の作成・インプット、プログラムのステークホルダーとの連携等のサポートをしています。プロジェクト開発というのは、ASEANが定めている目標や戦略、ASEAN各国政府及びOECD加盟国からのニーズ、地域内で活動する他の国際機関や各国援助機関の現在の活動状況、そしてOECDの専門性や強みを考慮した上で、ASEAN経済統合を実現するために必要な政策レベルでのプロジェクトを、それぞれのテーマを担当するOECD内の部局や他の国際機関、ASEAN各国と協力して開発していくことです。二つ目は、ミャンマーの中小企業統計を整備するためのミャンマー政府職員の能力向上プロジェクトの運営です。このプロジェクトも、先ほどご説明したプロジェクト開発を経て実施しているものです。このプロジェクトでは、プロジェクトを実施する上で必要となる調査・分析、プロジェクトの目標の進捗確認、予算管理、対外関係の管理等を行っています。具体的には、ミャンマーでコンサルタントを雇い、中小企業統計の現状について調査を行うための質問票を準備するとともに調査に協力してもらう政府関係機関を特定・調査を実施、その分析レポートの質を監督しています。加えて、プロジェクトが順調に進捗しているか管理することも私の役割で、具体的には、プロジェクト活動の資金を管理したり、ドナーやミャンマー政府に対して、プロジェクトの進捗状況や成果の説明を行ったり、ミャンマーの関係省庁や他の国際機関及び各国の援助機関と密に連絡を取り合っています。三つ目は、東南アジア地域プログラム運営グループの議長国(日本・インドネシア)とのコミュニケーションをサポートすることで、プログラム向上に向けた助言を行うなどして、議長国の戦略的マネージメントをサポートしています。

Mr.Oba-3

質問4.グローバル関係局は何をするところですか。OECDにおける役割は何ですか。

 グローバル関係局は、世界中のOECD非加盟国との関係を強化することによって、OECDと今日の重大な経済・社会問題との関連を強化することを担う部局です。新興国の台頭やグローバル化の進展の中、OECDが国際経済の発展という活動目的を達成するためには、加盟国だけでなく非加盟国との協力関係も強化していくことが必要です。特にOECDは2007年の閣僚理事会において、ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカの5か国との関係を強化することを定めているのですが、これはOECDの対外関係戦略における最優先事項で、これら5か国を「キーパートナー」と呼んでいます。また、東南アジアは戦略的地域に指定されています。グローバル関係局は、キーパートナー国に対して、OECDが開催する会議や対話への参加、OECDによりつくられたルールの遵守を勧めています。また、各国の経済・社会改革を包括的に推進するためには、それぞれの国に個別具体的な政策支援を実施していく必要があるので、2014年には国別プログラムという仕組みが設置されました。4か国(カザフスタン、タイ、ペルー、モロッコ)を対象国とすることを決定し、現在のところ、カザフスタン、モロッコ及びペルーとの国別プログラムに調印しています。これらの活動を通じて、重要な非加盟国との繋がりを強化し、国際経済の発展というOECDの活動目的を達成するために、経済・社会改革を推進しています。同時に、グローバル関係局では、OECD加盟国による決定にしたがって、ウクライナとの関係を強化するための作業計画を検討しています。さらに、コスタリカ及びリトアニアとの協力を強化し、OECD加盟に向けた準備をしているところです。


 OECDは、こういった地域プログラムを通じて、地域的対話を促すことによって幅広い国々と関係を強化し、成功経験を共有して、これらの国々がOECDによりつくられたルールの一部を順守していくことを目指しています。地域プログラムには、東南アジア、中東・北アフリカ(MENA)、中央アジア、南東欧向けのものがあります。加えて、アフリカにおける活動を強化する方法と、将来的なラテンアメリカ向けプログラムについても議論されています。このように、グローバル関係局は世界全体にまたがる幅広いプログラムの運営・管理を行っています。


 グローバル関係局は非加盟国に対する戦略や政策を担当し、具体的な政策分野はそれぞれ他の局が担当していますが、現在は、それら部局と連携しながらプログラムを実施しています。例えば、官民パートナーシップやジェンダーなど、各局にまたがる幅広いイシューやイニシアチブを統合するのが課題で、そのためにグローバル関係局独自のプロジェクトの開発を行っています。

質問5. これまでで印象に残った仕事は何ですか。

 2015年3月26日、ジャカルタにおいてASEAN10カ国及びOECD加盟国が出席し、これまでのOECD東南アジア地域プログラムの成果を確認し、今後の運営方針を議論するための第1回運営グループ会合が開かれました。その会合の成果文書は、会合時間内に採択されたのですが、その時の仕事が非常に印象に残っています。


 日頃から、極めて短時間で文書を仕上げ、提出しなければならないことが多いのですが、この会合でのスピード感は際立っていました。会合が進行していく中で、OECD及びASEAN各国が発言する度に文書を更新し、その文書を印刷、事務局と議長国に確認を取り、逐次修正を重ねていきました。時には、発言や文書修正案が不明瞭な時もあり、発言直後に発言者の席まで走って行き、詳細の確認をしたり、意図した通りに文書に反映されるように修正案を話し合ったりしました。文章を印刷するのもまた大変で、会場はインドネシア財務省内の会議場だったのですが、会場近くに小規模な事務局が設置されていただけで、簡単なプリンターしかありませんでした。文書の6回目の改訂版くらいまでは、数部の印刷でよかったので簡単だったのですが、7回目くらいからは60部を即座に印刷、会場の参加者全員に配布するというものになりました。5分以内といった短時間で60部を印刷するために、会議場とは別の建物にあるコピー機を使う必要があり、インドネシア政府の方々と会議場の外で相談をし、足の速い人に別の建物まで全力疾走してもらう体制を整えるなどしました。


 結果的に、初めての運営グループ会合は、日本とインドネシア両議長国による参加者を惹くことができ、議論への参加を促す議事進行のおかげで、非常にインタラクティブなものとなり、また、会合内で無事成果文書を採択することができました。最終的に文書は10回以上修正され、国際会議のダイナミックさを感じることができる大変印象に残る仕事となりました。

質問6. 仕事上で日本政府とどのような接点がありますか。大場さんはどのような役割を担っておられますか。

 日本は、2015年3月から3年間、東南アジア地域プログラムの共同議長国の一つです。そのため、共同議長国である日本の意思をプログラム運営に反映させるためのコミュニケーションをサポートする役割を担っています。例えば、毎日のようにOECD日本政府代表部の担当者の方とメールや電話で連絡を取り合い、プログラムの進捗具合やリソース管理、将来的な方向性について情報交換を行っています。同時に、OECDと日本政府の幹部レベルの意見交換についても、重要なプログラムに関するコミュニケーションですので、局長が東京にミッション(出張)に行った際には、外務省や経産省の方々と連絡を取り合って、会議等の日程を調整するとともに、会議のためのブリーフィング・ノートや発言要領を作成しました。また反対に、閣僚会合や主要な会議にあわせて政府の方が日本からパリにいらっしゃる際には、事務局幹部との会議を設定したり、それに併せてブリーフィング・ノートや発言要領を作成したりします。


 日本政府には、東南アジア地域プログラムにおいて共同議長国を勤めるなど非常にアクティブな役割を果たしていただいています。そしてプログラムがカバーする専門分野、具体的には投資・規制改革・貿易・中小企業政策など、多岐にわたる分野において大きな貢献をしていただいております。また日本政府からは、プログラムの立ち上げとして大変重要な場であった2014年5月の閣僚会合には安倍総理大臣が、さらに2014年3月及び2015年3月の東南アジア地域フォーラムに副大臣及び政務官が参加され、強くコミットしていただいています。OECD事務局は、日本政府のアクティブな役割とコミットメントを歓迎しています。

質問7. 仕事上苦労されている点は何ですか。

 最も苦労している点はコミュニケーションです。OECDでは、やはり様々な国や地域出身の方とコミュニケーションを取る機会があります。様々な国や地域出身の人は、それぞれが異なった文化のベースや常識を持っており、稀に意思疎通が上手く行かず問題が起こることもあります。しかし事務局内部では、幸運なことに、それほどコミュニケーションに苦労した経験はありません。国際機関で働くような人たちは、比較的多様な文化に触れてきて、お互いに意思を伝えるには、やはり逐一言葉にしなければならないことを理解しています。ごくごく稀に意思疎通が上手く行かず問題が起こることもありますが、それは忙しすぎてコミュニケーションをとる時間が非常に限られていることによる、コミュニケーション不足から来るものがほとんどです。


 OECDで働く先輩たちに倣って、私も異なった文化のベースや常識を持っている人々とコミュニケーションを取る際には、背景の情報や事情もふくめ、出来る限り逐一言葉にするように気をつけています。それと同時に、相手がこちらに本当に伝えたいことが伝えられるよう、時間を取ってしっかり話しに耳を傾け、いろいろな補足質問をして、相手からこちらに伝え漏れがないか確認しながらコミュニケーションを取るようにしています。

Mr.Oba-4

質問8. JPO期間終了後の就職のために、日頃どのようなことに気をつけておられますか。

 第一に気をつけているのは、優秀な勤務成績を収めることです。OECDで働き続けるにせよ、別の国際機関で働くにせよ、仕事が出来る人間だと評価してもらうことは非常に重要です。また、国際機関内のフォーマルな空席情報はもちろん、インフォーマルな空席情報についても常時情報収集に努め、適当なポストがあれば積極的に応募するようにしています。また、上司に対し、自分が正規ポストの獲得を目指している旨を伝え、協力を取り付けておくようにしています。上司は、私に非常に親切にしてくれており、OECDのどこで私の専門分野に関係するようなポストが空きそうか、などの情報を前もって教えてくれたりします。OECD以外の国際機関の空席情報についても早い段階から情報収集に努め,適当なポストがあれば積極的に応募するようにしています。また、職務等を通じて付き合いのある他の国際機関の職員の方々とも交流を深めています。

質問9. 国際機関への就職、JPOを目指す方々にアドバイスをお願いします。

 よく先輩方からアドバイス頂くのは、国際機関で働く上で大切なのは、自分の専門知識及び分野を持ち、それを高めていくべきだということです。国際機関では、専門家を求める求人が出るので、自分が何らかの専門分野を持っていないといけないのは当然ですが、JPOの選考でも専門分野を持っているかが問われていたと思います。


 OECDでは、職員全員が何らかの分野の専門家であり、例えば地域統合一つとっても、組織内ですぐにいろいろな分野からの専門的な見解が得られ、大変勉強になります。こうした環境で働けることは、私自身専門分野を高めていく上でのモチベーションになりますし、仕事に大きなやりがいを感じます。