OECDの概要:投資委員会 - Investment Committee
1. 概要
OECD投資委員会(Investment Committee)は、以下を目的に、国際投資に関する議論を行っています。また、投資国としての新興国の影響力の増大、途上国開発における民間資金の需要の増大をふまえて、世界各地域へのアウトリーチ活動を行っています。
(1)国際協力と政策改革の推進により、成長のための投資と持続可能な開発の世界的な促進。
(2)開かれた透明な投資のための政策枠組み、資本移動及びサービスの維持・拡大。
(3)グローバル化している経済における責任ある企業行動の促進。
(4)国際投資協定のインパクトの向上と発展の支援。
(5)新たな投資傾向の分析と計測の向上。
2. 組織・構成
(1)構成員
加盟国からは、投資政策担当者(部長、課長級)が出席し、日本からは、外務省経済局経済協力開発機構室長が出席しています。
非加盟国からの参加は、会合毎に定められた参加要件に準じて決定されます。例えば、投資委員会拡大セッションには、加盟国に加え、「国際投資及び多国籍企業に関する宣言」(後述)の参加国であるアルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、クロアチア、エジプト、ヨルダン、カザフスタン、モロッコ、ペルー、ルーマニア、チュニジア、ウクライナ、ウルグアイに対して「連携国」(アソシエート)としての参加の招待がなされています。
また、国際通貨基金(IMF)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世銀、世界貿易機関(WTO)に対してオブサーバーとしての参加の招待がなされています。
(2)議長等
(ア)議長:オーストリア
(イ)副議長:日本、アメリカ、イスラエル、チリ
(ウ)ビューロー(幹事役):
責任ある企業行動に関する作業部会議長 : スイス
自由化規約に関する諮問タスクフォース議長 : イギリス
国際投資統計作業グループ長 : ベルギー
無任所 : フィンランド、カナダ、コスタリカ、EU
(3)下部組織・関連会合等
(下部組織)
(ア)責任ある企業行動(RBC)に関する作業部会(WPRBC)
(イ)自由化規約に関する諮問タスクフォース (ATFC)(投資委員会、金融資本市場委員会、保険及び私的年金委員会の共催)
(ウ)国際投資統計作業グループ (WGIIS)
(主な関連会合)
(ア)投資の自由(FOI)ラウンド・テーブル
(イ)投資協定会合、投資協定の将来会合
(ウ)投資促進機関ネットワーク会合
(エ)投資と持続可能な開発ラウンド・テーブル
(オ)OECD多国籍企業行動指針各国連絡窓口(NCP)会合
(カ)責任ある企業行動(RBC)グローバル・フォーラム
(4)関連するOECDルール
(ア)資本移動の自由化に関する規約
(イ)経常的貿易外取引の自由化に関する規約
(ア)(イ)は合わせて「自由化規約」と呼称されています。
(ウ)国際投資及び多国籍企業に関する宣言:「多国籍企業行動指針」、「内国民待遇」、「相反する要求」、「国際投資促進及び抑制策」の4つから構成されています。
(エ)責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス
3. 最近の活動内容
(1)投資・資本移動の自由
(ア)資本移動の自由化に関する規約/経常的貿易外取引の自由化に関する規約(1961年採択)
これらの規約は、資本及びサービスの自由な移動にかかる障壁の除去を、加盟国間の相互監視により推進してきた投資委員会の根本規約です。加盟国間での無差別の待遇や自由化措置を全てのIMF加盟国に対して適用するよう努力するとの規定があります。
2012年、金融資本市場委員会及び保険・私的年金委員会との合同により、各国の金融措置等に関して規約上の位置付け等を審議する、「自由化規約諮問タスクフォース(ATFC)」が設立されました。近年の国際金融動向を踏まえて、2016年4月から、同タスクフォースにて、自由化規約見直し(レビュー)について議論を行い、2019年OECD閣僚理事会で、自由化規約の改訂版が承認されました。
(イ)投資の自由(Freedom of Investment)ラウンド・テーブル
安全保障等を理由として投資規制を強化しようとする保護主義的な動きに対し、投資の自由を確保することを目的として開始されました。会合では、各国が最近取った投資規制措置について意見交換がなされます。
また、非加盟国を含め、参加国を可能な限り拡大すべきとの観点から、2009年から「国際投資及び多国籍企業に関する宣言」参加の非加盟国や中国、インド、インドネシア、南アフリカ、サウジアラビア等のG20参加国が招待されています。投資協定への関心が高まっていることを受け、2015年からは毎年、投資協定に関する国際会議を開催しています。
(2)投資政策の分析(投資のための政策枠組み(PFI))
PFIは、経済成長と持続可能な開発を支える民間投資を促進するために、各国の投資環境・投資政策を評価し、投資政策の策定・実施を支援するツールです。
PFIは、12の投資に関連する政策分野(投資政策、金融・税政策、公的ガバナンス等)に関する章から構成され、質問票(チェックリスト)形式となっており、自国の投資環境について自己評価を行うためのツールです。
2003年のOECD閣僚理事会において「開発のための投資イニシアティブ」に関する日本の提案が了承されたのを受けて、安定した経済成長と持続可能な開発を支えることを目的とするツールとして2006年に承認され、2015年OECD閣僚理事会で改訂版が承認されました。
(3)責任ある企業行動の推進(多国籍企業行動指針)
2013年3月、投資委員会作業部会を改組し、多国籍企業行動指針(外務省のページにリンク https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/csr/housin.html)を所轄する「責任ある企業行動に関する作業部会(WPRBC)」が設立されました。
主要な活動は、(1)多国籍企業行動指針の着実な実施と個別案件を扱う各国連絡窓口(National Contact Point: NCP)の支援、(2)ステークホルダーの幅広い関与を得て実施するプロアクティブ・アジェンダ(鉱物、繊維、農業、金融等の分野が対象。例えば「紛争・ハイリスク地域産鉱物サプライチェーン・デューディリジェンス・ガイダンス」の作成等。)、(3)OECD多国籍企業行動指針の非加盟国・地域に対する普及促進です。
(4)国際投資統計関連作業
数年に亘るIMFとの投資統計に関する専門家会合を経て、2008年、「対外直接投資(FDI)に関するOECDベンチマーク定義」(OECD Benchmark Definition of Foreign Direct Investment)を改訂しました。
4. アウトリーチ活動
(1)投資政策全般にかかるアウトリーチとして、投資の自由ラウンド・テーブル、国際投資のためのグローバル・フォーラムを通した政策議論を行っています。
(2)「投資のための政策枠組み」(PFI)を基に、各国の政策を評価する「投資政策レビュー」を、アジア、中東、アフリカ、中南米、中東欧、中央アジアなどの地域のOECD非加盟国に対して実施しています。
(3)新興国の企業行動を、OECD加盟国のそれと同様のレベルに引き上げるために、「責任ある企業行動」(RBC)の分野において、「RBCに関するグローバル・フォーラム」の場における政策課題及びベスト・プラクティスを提示しています。