OECDの概要:国際商取引における贈賄作業部会 - Working Group on Bribery in International Business Transactions
1.概要
国際商取引に関連して行われる外国公務員に対する贈賄行為は公正な競争を阻害しているとの問題意識から、OECDは1989年にこの問題を扱う専門家グループを設置しました。1994年にはこの専門家グループでの議論を受け、国際商取引における外国公務員に対する贈賄との闘いのために効果的な措置をとることを内容とする理事会勧告が採択され、本作業グループが同勧告の実施の監視及び促進を担当する機関として、国際投資・多国籍企業委員会(現在の投資委員会)の下部機関として設立されました。
その後、1997年に勧告は改訂され(以下、この勧告を「97年改訂勧告」と呼びます。)、そこでは外国公務員に対する贈賄行為を国内法上犯罪とすることを目的とした条約の作成交渉を開始することが決定されました。1997年11月にこの交渉は妥結し、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(以下、「贈賄防止条約」と呼びます。)が採択されました。
本作業部会は、1999年2月に発効した贈賄防止条約の実施状況を監視し、促進するための役割を担っています。
2.組織・構成
(1)構成
OECDの一機関として主にOECD加盟国で構成されていますが、贈賄防止条約の実施機関でもあるので同条約を締結しているOECD非加盟国も参加しています。
2017年8月現在、44カ国がその活動に参加しています(OECD非加盟国は、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、コロンビア、コスタリカ、ペルー、ロシア、南アフリカ)。
(2)議長
議長は、スロベニアのドラゴ・コス氏が務めています。
(3)オブザーバー
欧州評議会(COE)、国際通貨基金(IMF)、米州機構(OAS)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、世界銀行(World Bank)、世界貿易機関(WTO)等の国際機関がオブザーバーとして参加しています。
(4)下部組織
ありません。
なお、贈賄作業部会は、冒頭に記述した通り、もともと他委員会の下部組織でしたが、2012年に独立組織に昇格しました。
3.最近の活動内容
作業部会の活動は、贈賄防止条約及び2009年に採択された国際商取引における更なる外国公務員の贈賄の防止のための理事会勧告等の実施状況を監視し、履行を促進するための活動が大きな柱となっています。
具体的には、各国の国内実施法令の規定と贈賄防止条約の整合性についての審査(フェーズ1審査と呼んでいます。)、各国の国内実施法令の実効性についての審査(フェーズ2審査と呼んでいます。)、各国の国内実行法令の執行面についての審査(フェーズ3審査と呼んでいます。)が行われてきました。
また、2016年より、フェーズ4審査が開始され、主要な贈賄作業部会横断的な課題や、フェーズ3審査までに確認された指摘事項等の進捗に関する審査が行われる予定です。
日本に関しては、1999年10月及び2002年5月にフェーズ1審査、2005年1月にフェーズ2審査、2006年6月にフェーズ2追加審査、2007年3月にフェーズ2審査勧告実施に関するフォローアップ報告、2011年12月にフェーズ3審査、2013年12月にフェーズ3審査勧告実施に関するフォローアップ報告、2019年6月にフェーズ4審査が行われました。これら審査結果は、OECD本部ホームページにて公表されています。