OECDの概要:科学技術政策委員会 - CSTP:Committee for Scientific and Technological Policy
1.概要
加盟国間の科学技術政策に関する情報及び意見交換を行うとともに、科学技術・イノベーションが経済成長に果たす役割、研究体制の整備強化、研究開発における政府と民間の役割、国際的な研究開発協力のあり方等について検討を行っています。
2.組織・構成
(1)構成
CSTP本会合には、各国より局長級~課長級が出席しています。
日本からは、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付、文部科学省科学技術・学術政策局等から出席しています。
(2)議長・副議長
議長:ヤン・チャン 韓国科学技術政策研究所上席研究官
副議長:日本(小寺秀俊 京都大学名誉教授)、米国、オーストリア、スイス、フィンランド、EU
(3)参加国等
OECD加盟国に加え、以下の国・国際機関が参加しています。
参加国:ブラジル、中国、南アフリカ、アルゼンチン、コスタリカ、カザフスタン、タイ、インド、ブルガリア
オブザーバー:欧州評議会(COE)、国連貿易開発会議(UNCTAD)
(4)下部組織
ア 科学技術指標専門家作業部会(NESTI)
各国の科学技術に関する研究開発統計の収集・利用のための国際的な標準を定めたフラスカティ・マニュアルの継続的改善等を実施するとともに、これを補完し、より多面的に科学技術活動を把握するための新規科学技術指標(イノベーション、特許、人材等)の開発等を進めています。
イ イノベーション技術政策作業部会(TIP)
科学技術イノベーションを政策的に経済成長に結び付けるために,科学技術イノベーションの経済・社会に対する影響を分析・評価し,今後の政策の在り方を含めた情報を共有する活動を行っています。近年では、共創活動と公的研究政策など科学技術イノベーション政策における共創の役割や協調的移行に関わる共創プロジェクトを実施しています。
ウ グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)
各国における科学政策の高度化や科学分野における国際協力の促進を目的として、(1)科学活動の強化、(2)科学分野における国際協力、(3)地球規模課題の解決に向けた科学、(4)社会における科学と政策のための科学の4つを主要テーマとして活動を行っています。近年では、研究インテグリティ・セキュリティ、研究インフラの運用の最適化、研究雇用不安対策、ハイリスク・ハイリワ-ド研究、データ科学のためのデジタルスキル、地球規模課題の解決に向けた学際的研究、危機時における科学の動員などのプロジェクトが進められています。
http://www.oecd.org/science/inno/global-science-forum.htm(OECDのページ。英語)
エ バイオ・ナノ・コンバージングテクノロジー作業部会(BNCT)
バイオテクノロジー、ナノテクノロジー及び他のテクノロジー(情報通信技術など)との融合に関連する政策問題に対処するため、様々な技術の開発、使用、役割、影響などに幅広く着目しています。近年は、“社会における、社会のための技術”をテーマに、技術の評価と予見、パンデミック対策や健康レジリエンスに注目した国際協調プラットフォームの実現、神経科学に関する理事会勧告の実施、バイオエコノミーとその先のカーボンニュートラル社会実現のための炭素転換における持続可能性指標などのプロジェクトを進めています。(2015年1月より、バイオテクノロジー作業部会(WPB)とナノテクノロジー作業部会(WPN)を統合し、名称変更)
3.最近の活動
(1)科学技術イノべーションアウトルック(STIアウトルック)
OECD諸国の科学技術政策、研究開発(R&D)の動向などを分析したアウトルックを刊行しています(2年に1度の頻度。2016年版より旧「科学技術産業アウトルック」から改称)。
https://www.oecd.org/sti/oecd-science-technology-and-innovation-outlook-25186167.htm(OECDのページ。2021年版、英語)
(2)科学技術産業スコアボード
科学技術、グローバル化、産業実績等の幅広いデータ・指標を用いて、OECD加盟国及びブラジル、中国、イスラエル、ロシア、南アフリカ等多くの主要非加盟国における、持続可能な経済発展、環境問題・社会的課題、知識のグローバル化などの世界規模の諸課題に焦点を当てて分析・評価を行っています。政策分析のために様々な指標を使いやすくかつ正確な統計データの形で提示しているため、参考文献としても広く活用されています(これまでは2年に1度の頻度で更新、2019年に”Measuring the Digital Transformation”を特別版として発行)。
https://www.oecd.org/sti/scoreboard.htm(OECDのページ。英語)
(3)主要科学技術インディケータ
OECD加盟国の科学技術活動に係る、研究開発投資関連データ、研究者関連データ、特許関連データ等一連の指標を提供しています。科学技術に係る基礎的・継続的・最新のデータ集として広く活用されています(1年に2度の頻度)。
https://www.oecd.org/sti/msti.htm(OECDのページ。英語)
(4)STIPコンパス
政府関係者、研究者等が各国の科学技術イノベーション政策を定性的・定量的かつ継続的に単一のプラットフォームでモニタリングできるよう、OECDと欧州委員会が立ち上げたデータベースです。2018年4月の立ち上げから常時更新されており、2022年8月時点で58の国・地域から6,724のイニシアティブが登録されています。
https://stip.oecd.org/stip.html(OECDのページ。英語)
(5)ニューロ・テクノロジー分野における責任あるイノベーションに関する勧告
ニューロ・テクノロジー(※脳神経情報を解読して活用する技術)の医療分野における健全な発展のために必要な、ステークホルダーが順守すべき9つの社会原則(下記)を定めた理事会勧告(2019年11月)です。BNCTで草案したものでニューロ・テクノロジー分野ではほぼ初となる国際勧告です。
1) 人権を尊重し、差別を助長しない、責任あるニューロ・テクノロジーの発展
2) ニューロ・テクノロジーの活用・発展に向けた安全性の確保(安全基準の定期見直し、予期せぬ副作用の防止)
3) 包摂性の確保(社会的弱者等の政策立案プロセスへの十分な関与、文化多様性への配慮)
4) ニューロ・テクノロジーの発展のための、国境を越えた科学技術協力の促進
5) 社会における十分な検討機会の確保(マルチ・ステークホルダー会合の開催を通じた対話等)
6) ニューロ・テクノロジーの新たな課題に対応する監視・諮問機関の能力向上
7) ニューロ・テクノロジーを通じて得られる個人の脳情報の保護
8) 官民間における信頼等の醸成
9) ニューロ・テクノロジーの意図せぬ利用や悪用等の予測・監視
(6)S&T Policy 2025
2021年にCSTPが開始したイニシアティブです。昨今のパンデミック、気候変動、AIの発展といった諸課題を受け、これまでの科学技術イノベーション(STI)政策を抜本的に再検討する必要があるとして事務局が2021年10月に提案しました。政策立案者がSTIシステムを方向転換するためのビジョンと実践的なガイダンスの策定、他の政策分野におけるSTIの理解度向上などを目的とした取り組みを今後進めていく予定です。
https://www.oecd.org/sti/inno/stpolicy2025/(OECDのページ。英語)
(7)BNCT/CSTPハイレベルイベント「社会における、社会のための技術」
2021年12月にBNCTとCSTPの合同イベントとして開催されました。オープニングでは、イタリア生態学的移行担当大臣、ポルトガル科学技術高等教育大臣、韓国科学・情報通信大臣、EUリサーチ&イノベーション総局事務局長、理化学研究所の原山優子常務理事等が登壇されました。コーマン事務総長も参加されました。ニューロ・テクノロジー-、カーボンニュートラル実現、世界的な医療、新興技術のガバナンスの4つのテーマについて議論が行われました。
イベントのリンク(OECDのページ。英語)