OECDの概要:化学品・バイオ技術委員会 - Chemicals and Biotechnology Committee

令和3年8月27日

1.概要

化学品・バイオ技術委員会は、「化学物質管理に関する特別プログラム」等を監督する委員会でナノ材料、農薬、バイオサイドを含む様々な化学物質管理の改善・調和に向けた課題に取り組んでいます。

 

「化学物質管理に関する特別プログラム」は1978年に開始され、各国の化学物質管理システムの改善・調和を促進することで、化学物質のリスクから人の健康と環境を守るとともに、非関税障壁が作られることを防ぎ、加盟国・産業界のコストを低減し、グリーン成長と持続可能な開発に貢献することを目的としています。同プログラムに加え、一部、パートI予算において行われている事業と合わせ、2021年1月1日より、一元的に化学品管理を担当しています。

 

2.組織・構成

(1)構成

OECD加盟国のうち、アイスランド、ポルトガル、ギリシャの3か国を除く35か国により原則構成され、出席者の多くは化学物質政策担当者(部局長・課長級)及び研究者です。日本からは、経済産業省、環境省、厚生労働省、農林水産省から課長級ほかが出席しています。

 

(2)議長、副議長

議長:カナダ

副議長:EU、日本、米国、独、ラトビア、コロンビア

 

(3)オブザーバー

  • データ相互受入れ実施国(連携国):ブラジル、インド、南アフリカ、アルゼンチン、マレーシア、シンガポール、タイ
  • 参与国:コロンビア、カザフスタン(全ての関連会合。その他、個別の会合について参与国となっている国もあります。)
 

(4)下部組織

化学物質に関する下部組織は、   化学品プログラムの下に3つ、   パートI予算事業の下に6つ、   両者の下に2つあり、以下のとおりです。

 

   ばく露評価作業部会(WPEA)、ハザード評価作業部会(WPHA)、工業ナノ材料作業部会(WPMN)、リスク管理作業部会(WPRM)

 

   農薬作業部会(WPP)、殺生物剤作業部会(WPB)、PRTR作業部会、化学品事故作業部会(WPCA)、新規食品・飼料安全性作業部会(WPSNFF)、バイオテクノロジー規制的監督調和作業部会(WPHROB)

 

   テストガイドラインプログラム各国調整官作業部会(WNT)、GLP作業部会(WPGLP)

 

3.最近の活動内容

(1)グローバル環境フォーラム:工業用・消費者用化学品のコストエフェクティブな管理システムを目指して (2020年11月)

OECDの環境に係る活動について広く議論する場であるグローバル環境フォーラムにおいて、2020年11月会合が「工業用・消費者用化学品のコストエフェクティブな管理システムを目指して」をテーマとして開催され、業界関係者、専門家、NGO等の幅広い関係者により、コロナ禍における化学品管理も含め、持続可能で費用対効果の高い化学品管理について、議論がなされた。

 

(2)違法な農薬の国際貿易に対する理事会勧告(2019年2月)

農薬はその効用から世界各国で厳格な規制が適用されていますが、近年求められる効用がないどころか更には植物、健康に有害性のある違法な農薬が取引され、社会問題化しているケースがあります。OECDでは、化学品の有害性の基準調和を図っており、違法な農薬の国際貿易に対してOECD加盟国による協調的に対応するため、(1)各国において適切な農薬管理・規制体制を確保すること、(2)違法農薬貿易の検知・対応システムを確保すること、(3)違法農薬貿易の最小化に向けて協力することを勧告しています。本勧告を契機として、本問題にハイライトを当てるとともに、税関、規制機関での協力、ネットワークの強化、国際協調が進むことが期待されています。

違法な農薬の国際貿易に関する勧告の詳細は、OECDのウェブサイト別ウィンドウで開くをご覧ください。

 

(3)データの相互受入れによる費用削減効果(2019年2月)

OECDでは、化学物質の試験法の統一(OECDテストガイドライン)及び優良試験所基準(GLP)に基づき、国際的なデータ相互受入れシステムを構築しており、産業界による安全性試験の重複実施や非関税貿易障壁を回避しています。
この相互受入れにより、政府及び産業界の化学物質管理に係るコストが大幅に低減されています。2019年1月には相互受け入れによる費用削減効果を推計したレポート第3版を公表し、それによると、費用削減効果は309百万ユーロ/年と推計され、農薬テストの重複回避(206百万ユーロ/年)が大きくなっています。加えて、この効果は、費用削減効果だけでなく約33000匹/年の実験用動物の不使用にも貢献しています。成長産業である化学品産業の製品価値は5.7兆ドルにも上り、2060年には22兆ドルまで達することが見こまれており、このシステムの果たす役割、環境・健康への影響は極めて大きくなっています。

この推計に関する詳細は、OECDのウェブサイト別ウィンドウで開くをご覧ください。

 

(4)その他の活動

近年、世界的な課題となっている海洋プラスチック問題について、環境政策委員会(資源生産性・廃棄物管理,生物多様性等の観点)と本委員会(化学物質管理の観点)の両委員会で連携して取組が進められています。2019年6月のG20「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」及びG20大阪サミットにおいて、海洋プラスチックごみ問題に関して大きな成果がまとめられましたが、OECDにおける取組はその一助となりました。現在、持続可能なプラスチックデザインに関する指針の作成、医薬品・先進的ナノ素材など新たな汚染源への対応、リサイクルと化学物質管理の整合性に関する事例研究、マイクロプラスチックの生態系影響の分析等の取組が進められています。


このほかの、最近の化学品・バイオ技術委員会におけるその他の活動については、以下のOECDのウェブサイトをご覧ください。