OECDの概要:教育政策委員会 - EDPC: Education Policy Committee
1.概要
教育政策委員会は、経済成長のための科学・技術者の養成・訓練について検討していた「科学・技術者委員会」を1970年に改組して設置され、
・具体的な政策提言、政策レビュー、分析、データ収集を通じて、個人的、社会的、文化的、経済的な目標を達成するために、各国政府が効果的、効率的、エビデンスに基づく教育政策を策定することを支援する
・OECDの教育分野の活動において、戦略的方向性、一貫性、質、コミュニケーションを監督する
・OECD加盟国間、また必要に応じて非加盟国との間で、教育分野の活動に関して情報交換し、国際協力を促進する
・OECD加盟国及び非加盟国の関係者に対し、政策助言、データ及び政策分析を発信する
という役割を担っています。
OECDにおける教育分野の活動として、教育政策委員会(EDPC)のほか、(1)教育研究革新センター(CERI)、(2)生徒の学習到達度調査(PISA)事業、(3)国際教員指導環境調査(TALIS)事業、(4)国際成人力調査(PIAAC)事業の4つのパートIIプログラム(当該事業に関心を有する一部の政府等が費用を分担して共同実施するもの)が実施されており、教育政策委員会とは別に、各プログラムの運営理事会を設置し、政策決定をしています。
2.組織・構成
(1)構成
各国政府代表として各国の教育省等から次官級~課長級が参加しています。
日本からは、文部科学省の職員が出席しています。
(2)議長・副議長
議長 : 米国
副議長 : 日本、カナダ、フィンランド、オランダ、ノルウェ―、スイス
(3)非加盟国における参加国(パーティシパント)
ブラジル、カザフスタン、ルーマニア
(4)オブザーバー
欧州評議会、国連教育科学文化機関(ユネスコ)
3.最近の活動
(1)早期教育保育事業(ECEC:Early Childhood Education and Care)
幼児教育・保育(ECEC)の質のさらなる向上のため、各国の幼児教育・保育政策の分析や国際比較等を行っています。ECEC事業には文部科学省(幼稚園)、厚生労働省(保育園)、内閣府(認定こども園)の関係3府省が連携して取り組んでいます。また、TALIS傘下で国際幼児教育・保育従事者調査(Starting Strong Survey)を実施しています。
2021年(令和3年)6月には、OECD 幼児教育・保育白書第6部(Starting Strong VI: Supporting meaningful interactions in early childhood education and care)が公表されました。これは、増大する幼児教育・保育への需要と期待に応えることを目的として、国際比較を通じ、最低基準や要件にとどまらない幼児教育・保育施設の多面的な「質」及びそれを向上させる政策についてより理解を深めるために、2017~20年にかけて、120 以上の異なる幼児教育・保育施設類型について、資格要件や労働環境のデータを分析し、とりまとめたものです。
(2)教育とスキルの将来(Future of Education and Skills 2030)事業
2030 年に子供たちに求められるコンピテンシー(資質・能力)を検討するとともに、そのようなコンピテンシーの育成につながるカリキュラムや指導方法、学習評価などについて検討するプロジェクトです。具体的には、
・現代の生徒が成長して、世界を切り拓いていくためには、どのような知識や、スキル、態度及び価値が必要か。
・学校や授業の仕組みが、これらの知識や、スキル、態度及び価値を効果的に育成していくことができるようにするためには、どのようにしたらよいか。 という2つの大きな問いに、世界の国々が答えを見つけられるようにすることを目的としています。
2015~18年のフェーズ1では、2030年に向けた、生徒に求められるコンピテンシー等を関係者と協働して導出(「学びの羅針盤」ラーニング・コンパス)するとともに、国際的なカリキュラムデザインに関する共通原理の分析を実施しました。
2019年以降のフェーズ2では、2030年に向けた、教師に求められるコンピテンシー等を関係者と協働して導出するとともに、カリキュラムの効果的な実施を可能とする共通原理の分析を進める予定です。
本プロジェクトには、後述のOECD東北スクール事業の中で得られた知見が活かされています。
(3)高等教育制度のパフォーマンスの向上プロジェクト
2014年に開始された高等教育に関するワーキンググループにおいて、高等教育政策に関する各国担当者の意見交換が進められ、2019年には、「高等教育に関する専門家会合」が設置されました。
具体的には、(1)高等教育リソース確保プロジェクト、(2)高等教育エビデンスの強化の2つのプロジェクトが進められています。
(4)その他日本と関係が深い活動
(ア)OECD/JAPANセミナー
日本は、1993年より定期的に、文部科学省とOECDの共同事業として、国際会議「OECD/JAPANセミナー」を日本で開催しています。近年の開催実績は以下のとおりです。
第13回(2010年6月):保育者の専門性と園組織運営における質の向上
第14回(2011年6月):教育の質の向上-PISA から見る、できる国・頑張る国
第15回(2013年2月):高等教育のグローバル戦略-世界動向と政府の役割の再検討-
第16回(2014年2月):キーコンピテンシー/21世紀スキル
第17回(2014年6月):よりよい教員政策の形成-国際比較からみる政策上の教訓、これからの教育と学校への示唆-
第18回(2015年12月):Education 2030-21世紀コンピテンシー
第19回(2017年7月):PISA2015から見えるこれからの学び-科学的リテラシーと主体的・対話的で深い学び-
第20回(2018年7月):OECDからみる日本の教育政策
第21回(2022年2月):教育現場を変革するデジタルの力
(イ)教育に関する日本・OECD共同イニシアティブ・プロジェクト・OECD東北スクール
2011年4月、OECD事務総長から、日本に対し、少子高齢化・グローバル化等に対応した新たな教育モデルの共同開発共同開発について提案があり、「OECD東北スクール」としてスタートしました。
「OECD東北スクール」は、「2014年夏にパリで東北の魅力を世界にアピールするイベントを実施する」との目標の下、東日本大震災で被災した子どもたちが主体性を発揮し、自らの力で東北地方の魅力をPRするような国際イベントの企画・実践を通して、地域の復興、海外への地域アピールに貢献することを目指して実施されたプロジェクト学習です。この取組は、福島大学を運営主体とし、OECDと文部科学省の協力体制のもと、外務省・OECD日本政府代表部、地方公共団体、民間企業・団体など様々な機関や個人の支援を得つつ、取組の過程を通じて、国際的な視野を備えた、震災からの復興の担い手の育成を目指して実施されました。2014年8月30-31日には東北の中高生約100人がパリ・シャンドマルス公園でイベントを行うとともに、同年9月2日には、生徒による桜の植樹が行われました(https://www.oecd.emb-japan.go.jp/tohoku/index.html)。
その後も、本プロジェクトでは、「OECD東北スクール」で得られた課題解決型学習の有用性などを踏まえつつ、OECDが有する国際比較データを生かしながら、
(1)日本とOECDによる政策対話、
(2)東京学芸大学を実施主体とする日本・OECDの共同研究、
(3)Japan Innovative Schools Network supported by OECD
の3つをプロジェクトの柱として、2015年から17年まで実施されました。また本プロジェクトの成果は、Future of Education and Skills 2030プロジェクトの発展に貢献してきました。
2021年からは、東京大学が中心となり「きょうそうさんかくたんけんねっと」(Gakugei - Japan Innovative Schools Network supported by OECD)としてネットワークを再構するとともに、共同研究に取り組んでいます。同ネットワークは、Future of Education and Skills 2030事業の理念を踏まえ、地域の様々な関係者が協働し、教育における研究と実践の深化及び連携強化と、その成果発信を行っています。
(ウ)教育に関する日本・OECD共同イニシアティブ・プロジェクト
2014年4月、グリアOECD事務総長から、安倍総理・下村文部科学大臣に対し、少子高齢化・グローバル化等に対応した新たな教育モデルの共同開発共同開発について提案があったものです。「OECD東北スクール」プロジェクトで得られた課題解決型学習の有用性などを踏まえつつ、OECDが有する国際比較データを生かしながら、(1)日本とOECDのハイレベルな政策担当者による政策対話、(2)東京学芸大学を実施主体とする日本・OECDの共同研究、(3)Japan Innovative Schools Network supported by OECD (OECD日本イノベーション教育ネットワーク) の3つのプロジェクトを柱として、2015年~17年に実施。本プロジェクトの成果は、Education2030プロジェクトに貢献してきました。