OECDの概要:原子力機関 - NEA: Nuclear Energy Agency

令和5年4月18日

1.概要

(1)沿革

原子力の発展を目的として西欧諸国がその知的、財政的資源を共同利用するために、1958年に欧州原子力機関として設立され、1972年に日本が加盟した際に原子力機関と改められました。

 

(2)目的

参加国間の協力を促進することにより、安全かつ環境的にも受け入れられる経済的なエネルギー資源としての原子力エネルギーの発展に貢献することを目的として、原子力政策、技術に関する情報・意見交換、行政上・規制上の問題の検討、各国法の調査及び経済的側面の研究等を実施しています。

 

(3)加盟国

34か国(チリ、コロンビア、コスタリカ、エストニア、イスラエル、ラトビア、リトアニア、及びニュージーランドを除くOECD加盟国並びにアルゼンチン、ブルガニア、ルーマニア及びロシア)

  ※ロシアは2022年5月11日より参加停止

2.組織・構成

(1)組織・構成

NEA運営委員会にて政策的な決定を行い、より詳細な内容については8つの常設技術委員会及びその下部に設置されたワーキンググループ等により実施しています。

NEA運営委員会には、各国より局長級・課長級が出席しています。日本からは、内閣府、文部科学省、経済産業省及び原子力規制庁から出席しています。

 

(2)議長、副議長

NEA運営委員会議長:マルタ ジアコバ(元スロバキア原子力規制委員長、元IAEA理事会議長)

副議長:日本(北郷太郎(文部科学省参与、原子力損害賠償・廃炉等支援機構国際グル-プ執行役))、米国、英国、フランス、韓国

 

(3)下部組織(常設技術委員会等)

  • 原子力規制活動委員会(CNRA)
  • 原子力施設安全委員会(CSNI)
  • 放射性廃棄物管理委員会(RWMC)
  • 原子力施設の廃止措置及びレガシー廃棄物管理委員会(CDLM)
  • 放射線防護及び公衆衛生委員会(CRPPH)
  • 原子力法委員会(NLC)
  • 原子力開発・核燃料サイクルに関する技術的経済的検討委員会(NDC)
  • 原子力科学委員会(NSC)
  • 核データ及びコードの開発・応用及び妥当性検証のための管理委員会(MBDAV)

※NEAデータバンクの運用を行うMBDAV以外の8委員会が常設技術委員会とされています。

 

3.最近の活動内容

(1)NEA戦略計画の策定

1999年以降、NEAでは、加盟国からの時代に応じた要請を自らの活動に反映させていくため、使命・活動・運営等の方向性等に関する戦略計画を作成しています。
現在は、4期目(2017-22年)の戦略計画に基づいて活動を行っています。5期目(2023-28年)の戦略計画は、2020年7月から検討が進められ、2022年2月に策定されました(第5期戦略計画のリンク)別ウィンドウで開く

 

(2)東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に関する主なレポート

東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故を受け、NEAは専門家の現地派遣に とどまらず、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に関するシニアレベル・タスクグループ」を設置し、各国のシニアレベルの原子力安全規制当局者関係間で、事故後の各国の対応状況の把握、原子力安全の観点から今後国際的に実施していく事項についての検討・整理等を実施し、その結果を2013年9月に特別レポートとしてとりまとめました(報告書のリンク)別ウィンドウで開く

 

さらに、CNRAを中心に、CSNI、RWMC、CRPPH、NLCを含めた4つの常設技術委員会において検討を進め、2016年2月には、2013年のレポートのアップデートとして、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故以降、約5年の間にNEA及びNEA加盟国が原子力の安全性を改善するために行った取組、これらから得られた教訓及び今後の課題を網羅的に示すものとして、“Five Years after the Fukushima Daiichi Accident: Nuclear Safety Improvements and Lessons Learnt”をとりまとめました(報告書のリンク)別ウィンドウで開く

 

2021年3月には、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響と今後の見通しを包括的に紹介し、政策担当者に加えて、一般の人々への明確な情報提供を意図した”Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident, Ten Yeas On”をとりまとめました(報告書(日本語版)のリンク)別ウィンドウで開く

 

(3)原子力事故後の復旧の枠組みの構築に関する報告書(Building a Framework for Post-Nuclear Accident Recovery Preparedness)

東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故における教訓を踏まえ、各国が事故後の復旧に向けたより良い準備に向けた計画、手法の策定を支援することを目的として、2022年5月に報告書をとりまとめました(報告書のリンク)別ウィンドウで開く。本報告書のとりまとめに向けて、2020年2月には、日本でワークショップを開催しています(ワークショップの報告書(日本語版)のリンク)別ウィンドウで開く

 

(4)原子力教育・スキル・技術に関する取組

1) NEA加盟国において、原子力科学技術の専門家が様々な分野で必要とされているものの、現在の若い世代にとって、このための国際的な人材育成プログラムに参加する機会が失われているという認識のもと、NEAでは、優秀な若い世代の原子力科学技術への興味関心を高めるため、2019年春から、NEST (Nuclear Education Skills and Technology) プロジェクトを実施しています。
日本では、日本原子力研究開発機構(JAEA)/廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)と東京大学が、先進遠隔技術・ロボット工学(ARTERD)プロジェクトを実施中です(プロジェクトのリンク)別ウィンドウで開く

 

2) 理工系分野の人材確保、特に女性の活躍が低調であることが課題となっています。その課題解決に向けた取組として、女子高生を対象に、国内外で活躍する専門家や生徒との交流を通じて、当該分野への進学を検討していただくことを目的に、2017年からメンタリング・ワークショップを開催しています。

 

日本では、2017年には量子科学技術研究開発機構(QST)と、2018年にはJAEAと、2019年以降は原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)との協力の下にワークショップを開催しています。

 

5)NEAデータバンク事業の実施

NEAデータバンクは、1964年に設置されたNEA計算機ライブラリー及び中性子データ編集センターが1978年に合併してできたもので、現在28か国が参加しています(ロシアは参加停止中)。
データバンクでは、原子力の研究開発に必要な核データ及び計算コードの開発、収集、妥当性検証、提供等を実施しています。

 

また、2016年4月の運営委員会において、データバンクの改革に関する提案が了承され、運営委員会の直下にMBDAVが設置されました。