OECDの概要:規制政策委員会 - RPC: Regulatory Policy Committee
1.概要
かつて規制政策は公共ガバナンス委員会(PGC)の下部機構の規制管理・改革作業部会(REG)と、規制・競争・市場開放を横断的に議論する「規制政策グループ(GRP)」で議論されてきました。2009年、議論をより一層促進するため、「規制政策委員会(RPC)」が設置されました。
また、2013年には、RPCの下部作業部会として、各国の経済的規制当局(電力、ガス、水道、電気通信、鉄道等の規制当局)が参加する経済的規制当局ネットワーク(NER)が設置されました。
2.組織・構成
(1)構成
各国の規制改革当局から担当者が参加しています。我が国からは、規制政策委員会に内閣府規制改革推進室、総務省、経済産業省等の参加実績があります。
また、経済的規制当局ネットワーク会合には、我が国から、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の参加実績があります。
(2)議長、副議長
議長: ドイツ
副議長: アメリカ、オーストラリア、カナダ、EU、フランス、イスラエル、イタリア、ニュージーランド、ポルトガル、英国
(3)非加盟国
参与国(participant):ペルー、タイ
招待国(invitee):アルバニア、アルゼンチン、アルメニア、ブルネイダルサラーム、カンボジア、中国、エジプト、エルサルバドル、香港、インド、インドネシア、ヨルダン、カザフスタン、コソボ、ラオス、マレーシア、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、オマーン、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、チュニジア、ウクライナ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、ヴェトナム
3.最近の主な活動
(1)RPCでは、加盟国に対して規制改革に関する国別審査を実施しており、我が国も1998年に審査を受け、2004年にそのフォローアップを受けました。最近の規制政策審査の対象国は、クロアチア、スロバキア、ペル-、ブラジルなどです。
(2)2012年には規制改革を行うに当たっての基本的な原則をまとめた「規制政策とガバナンスに関する理事会勧告(Recommendation of the Council on Regulatory Policy and Governance)」が採択されました。
この勧告を補完するものとして、テーマ毎により具体的に必要となる政策、実務及び制度に関する情報を記載した報告書が複数公表されています(「規制政策のベストプラクティス原則(Best Practice Principles for Regulatory Policy)」)。その一環として、2020年には、政策立案者等が、規制影響分析の制度と戦略をより良く設計し、実施するための総合的なツールを提供することを目的とした報告書「規制影響分析」等が公表されました。
(3)また、各国が規制を検討する際に関連する国際的な基準や枠組みを考慮する等により国際規制協力が図られることを促す観点から、加盟国における国際規制協力に関する最新の政策や実務のレビューが行われてきています。また、国際機関は国際規制協力を支援するために重要な役割を果たすことから、国際機関や研究者等を招いて国際的ルール策定のためのベストプラクティスの交換等を行う「効果的な国際的ルール策定に向けた国際機関パートナーシップ会議(Partnership of International Organisation for Effective and Impact in International Rulemaking (IO Partnership))」が2014年から毎年開催されている他、国際機関の実務に関する抄録等の作成に向けた取り組みがなされています。
長年の議論の蓄積を踏まえ、2021年には「国際規制協力のベストプラクティス原則(Best Practice Principles on International Regulatory Co-operation)」が公表され、その後2022年には「グローバルな課題に対処するための国際規制協力に関する理事会勧告(Recommendation of the Council on International Regulatory Co-operation to Tackle Global Challenges)」が採択されました。
(4)2015年10月には規制政策委員会で初めてのアウトルックとなる「規制政策アウトルック2015」が公表されました。同アウトルックは、各国の規制政策(規制影響評価等)の状況について取りまとめたもので、規制政策一般の分析のほかに、国別の規制政策の現状とOECDによる提言が記述されています。
2021年10月に公表された「規制政策アウトルック2021」は、規制政策とガバナンスに関する理事会勧告に定められた原則を背景とした各国の規制の質の改善のための取組を紹介するとともに、法律や規制が意図したとおりに機能することを保証するために各国が注力すべき事項が示されています。また、規制のサンドボックス、行動洞察をはじめとしたルール作りのための機敏で革新的なアプローチについて論じています。
(5)最近では、より良い政策を立案し施行するために、行動洞察(心理学、認知科学、神経科学、行動科学、社会科学からの洞察と経験的に検証された結果を組み合わせて、人間が実際にどのように選択を行うかを発見する、政策決定への帰納的アプローチ)を活用する政府・公的機関が増えています。規制政策委員会では2013年から行動洞察について議論が行われています。 2019年には、実務者や政策立案者に対して、政策問題を分析し、戦略を構築し、行動に基づいた介入を開発するための段階的プロセスを提供することを目的として、行動洞察に関するベーシック・ツールキットが公表されました。また、2020年には、行動洞察 が十分に活用されていない分野である安全文化(Safety Culture)の研究の参考となることを目的として、カナダ、アイルランド、メキシコ及びオマーンのエネルギー規制当局を対象とした実験の結果と、安全文化への行動洞察の活用のための指針を提示した報告書「行動洞察と組織(Behavioural Insights and Organisations)」が公表されました。
(6)このほか、2021年には「イノベーションを活用するためのアジャイル規制ガバナンスに関する理事会勧告(Recommendation of the Council for Agile Regulatory Governance to Harness Innovation)」が採択されました。イノベーション関連分野における規制については、イノベーションによる環境変化のペースに規制内容が追いつかない場合があること、業種ごと等に設計されてきた既存の規制体系になじまない場合があること、一つの規制当局や国家のみでの適切な対応が困難な場合が多く存在すること等が指摘されてきています。この勧告は、上記のような課題を克服した上で、イノベーションに対応した、また、イノベーションを促進するような規制政策を展開する観点から各国が取り組むべき事項を取りまとめたものです。