館長からのメッセ-ジ
2016年10月
OECD日本政府代表部臨時代理大使
鈴木亮太郎

9月末に、OECD日本政府代表部に着任しました。兒玉和夫前大使の転任に伴い、新大使が着任するまでの間、臨時代理大使を務めております。直前は、在ラオス日本大使館で、二国間関係の強化や地域共同体の推進に取り組みました。着任以来、毎日新鮮な気持ちで、当地に駐在する他国の代表部とも協力して、OECDの活動が我が国や国際社会にとって有益なものとなるよう仕事に臨んでいます。
OECD(経済協力開発機構)は、1961年(昭和36年)に発足して以来、市場経済と民主主義を基調として、加盟国の経済成長や雇用・生活水準の向上、自由貿易の拡大、そして発展途上にある国の経済開発に大きな役割を果たしてきました。そして現在も、国際社会が直面する経済政策・社会政策の面での諸課題をカバーして、それらを克服するための検討を主導しています。日本が東京オリンピックを開催し、高度成長の槌音高い1964年(昭和39年)にOECDに加盟して以来、OECDは、既に半世紀以上、良き伴走者として日本の発展とともに歩み、また国際的な政策協調をリードしてきました。
OECDには、日本を含む35か国が加盟し、経済、財政、金融、貿易、開発といった様々な分野でテーマ別に設置された委員会や下部機関での協議や統計の整備を通じて、加盟国を含む国際社会全体にとってより望ましい政策の提言や、共同して守る基準の作成などの取組を行っています。OECDが「世界のシンクタンク」といわれるのも、このような活動に着目したものといえます。それらは、一般的には良く知られていないものもありますが、OECDの幅広い活動や代表部の仕事についてより知っていただけるように、一層努力して参ります。
現在、OECDが最も注視するトレンドのひとつが格差の拡大です。OECDは、成長のための政策が格差の拡大につながらないような「包摂的成長(inclusive growth)」を達成する政策を検討しています。OECDは、経済政策、財政金融、貿易投資、雇用教育等の従来からの政策課題のみならず、グリーン成長、イノベーション、デジタル経済等、新たな成長の源泉についても検討を行ってきています。改めて気付かされるのは、各専門分野の課題が、分野を超えた関連性や大きな広がりを持っていることであり、分野横断的な取組が重要となっていることです。OECDの中での、組織の垣根を越えた仕事を支援していくのも代表部の任務のひとつです。
また、今日では、世界経済のグローバル化が進み、中国、インド、ブラジル等の新興経済諸国が世界経済に与える影響が非常に大きくなっています。OECDは、新興経済諸国との協力を推進し、G20等のグローバルな枠組への知的貢献に力を入れています。また、OECDが、成長著しいアジア地域への関与強化に力を入れていくことが重要です。2013年には東南アジア地域との協力強化のためのプログラムが立ち上げられ、日本はその運営委員会の共同議長を務めています。
このホームページがOECDの活動・成果や日本との関わりについて、皆様の御理解の一助となることを希望します。また、皆様からのご意見やご提案を歓迎いたします。